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DPのGao Pengyuは自身の作品『Emergency Rescue』で新しいARRI Orbiterを大いに活用

ヒット作となった中国映画数本の撮影を行った後、Gao Pengyuは最新のプロジェクトでカメラと照明の指揮を執りました。『Emergency Rescue』の撮影隊は、ARRI Orbiterの使いやすさとパワーを実感したといいます。

Aug. 16, 2021

Gao Pengyuは2006年、中国伝媒大学映画・テレビ芸術学部写真学科(Photography Department of the School of Film and Television Art at the Communication University of China)を卒業し、Chinese Society of Film and Television Photographers (CNSC)のメンバーも務めています。Pengyuは、『Liu Haizhu』、『My Father Jiao Yulu』、『Arrows Willow White Ape』、そして『Eighteen Cave Village』など、多くの中国映画を手がけてきました。2018年、『Eighteen Cave Village』が北京国際映画祭で注目の賞である最優秀撮影賞(Best Cinematography)にノミネートされました。最近のプロジェクトである『Emergency Rescue』では、ビジュアルコンポジションとカメラワークの監督に加え、照明と色に関わる作業に時間とエネルギーを多く費やしました。エキサイティングなストーリーに観客が夢中になるようにするには、これらの要素が重要となると思ったからです。

このプロジェクトへの参加の経緯を教えてください。

2020年末に呉樾(Wu Yue)と董璇(Dong Xuan)主演の中国版『Angry Scalper』の撮影を行った後、Chen Siming監督の『Emergency Rescue』の契約を受けました。以前の映画の撮影ではほとんど手持ちのカメラで撮影を行っていましたが、今回の映画はもっと大変でした。カーチェイスや爆発、ガンファイトが多く、また話の流れの中で登場人物同士の感情の高ぶりを表現しなければならないシーンもありました。カメラも構図も一貫したスタイルでなければならなかったのですが、スケジュールはとてもタイトでした。この点から言うと『Emergency Rescue』の撮影は、「困難を極める冒険」という本作のテーマを反映していますね。

この映画の照明には全体的なコンセプトはありますか?制作チームとはどのように照明と色について話し合いましたか?

最初に考えなければいけないのは、映像はサウンドと編集リズムを補完するということです。映像によって監督のドラマチックな表現を具体化し、脚本に隠されたリズムを反映させることが重要なのです。

『Emergency Rescue』では、映像によってイメージを誇張し、暑くて湿気の多い東南アジア独特の気候を表現することで、登場人物の性格を際立たせる必要がありました。まずシーンの色味を合わせる方法について美術監督と話し合うときには、さまざまなテクスチャにフォーカスするという監督の手法を常に考慮に入れました。ほとんどのシーンはリアルなシーンだったので、暑くて湿気の多い雰囲気を表現するためにロケ地選びにも慎重になりました。次に登場人物の美的表現ですが、額に髪の毛がくっつき、汗が顔をつたってしたたり落ち、Tシャツが汗でびしょびしょになり、濡れた革のジャケットに周りの景色が反射する、などといった点を特に工夫しました。映像によってこれらのテクスチャを表現しなければならなかったのです。そして、全体的に明るい拡散照明を使用することで、のびのびとした絵に仕上げることが重要でした。

本作品で使用した照明機器はどちらですか?

照明機器は従来のHMIとタングステンを使っていますが、レンタルハウスから新しいARRI Orbiter LEDを2台借りることができました。Orbiterのアクセサリーは15º、30º、60ºのオープンフェイス一式のセットです。DoPchoice Sランタンも持っているので、さまざまな用途に使えるSkyPanelシリーズS30、S60、S360 LEDと、さらに無線のシグナルトランスミッター付きフルカラーLEDチューブと合わせて使うことができました。これらの機材を使って小型DLTデジタル照明システムを構築しました。

本作の主役と悪役はとても個性の強い人物ですが、どのようにその性格を照明で表現しましたか?

ジョーダン・チャンが演じる役柄は、以前はギャングでしたが今はもっと安定した平凡な人生を送ろうとしています。この人物は普通の精神状態から激しい精神状態までスペクトラムで表されます。サム・リー演じる悪役は自分の兄弟の仇を討ちたいと思っているのですが、その行動にははっきりと動機が見えます。照明はほぼ拡散照明を使用しています。俯瞰照明は人物の目元に影を作って視線を隠すために多く使用しました。同時に、俳優が頭を上げたり下げたりする動作を追い、登場人物を最も生き生きと表現できる方法を模索しました。

撮影中に難しいと感じたことは何ですか?例を挙げてください。そしてどのように解決しましたか?

撮影3日目、窓のある部屋を半分閉鎖した環境で撮影するシーンがあったのですが、日光のある状況でどんよりとした雰囲気を作り出さなければなりませんでした。このシーンでは空の影響はあまり受けなかったのですが、完全には閉鎖されていない屋内だったので、フィクスチャーに30ºリフレクターを取り付け、光で窓を完全に包み込むようにしました。Orbiterの直接照明の威力はHMIを上回り、このシーンでは指向性の強い基準照明として使用しました。Orbiterを基準照明としたので、従来の光拡散を使って撮影することができました。Orbiterは強い指向性照明でありながら柔らかい光も作り出せますし、直接照明も可能です。また同時に、15ºリフレクターを交換すれば照明範囲はとても小さくなり、これまでさまざまな黒布で光りを遮断していましたが、その時間も機材の数も軽減できます。Orbiterのコントローラーのメニューは中国語でも記載されていますし、接続ケーブルの長さも十分です。色温度、カラーゲル、プログラミングも素早く設定可能することができます。

Orbiterは初めてお使いになるのですよね?これまでフィクスチャーはどのようにお使いになりましたか?

僕はOrbiterをだいたいセカンドライティングとして使用しています。大型照明に取り付けてフィクスチャーとして使用することが多いのですが、日光が弱いときに小さな空間でメイン照明として使用するのも好きです。広い範囲をカバーするようなOrbiterの付属品が開発されれば、Orbiterの照明はもっと強力になるので従来のHMI照明はもう必要なくなると思います。

倉庫内での悪役との戦いの撮影には、3つの大きな窓に12Kの照明と6K PAR照明を使用し、Orbiterはやはり1つの小さな窓からの日光として使用しました。一方、Orbiterの光度はARRI M18のそれに近いものがあります。

Orbiterの照明効果を活用することはできましたか?例を挙げていただけますか?

造船所が爆発した後、横転して壊れた車から悪役が脱出するシーンがあるのですが、セットの周りに炎の点がたくさんあって、それをCGIチームがポストプロダクションで海上火災の映像を作り上げました。この人物のクローズアップを撮影する際、ガファーのZhou JunleiがSサイズのランタンをOrbiterの上に直接置き、コントローラーで炎の光の効果を再現しました。Orbiterは軽いので扱いやすく、俳優と一緒に動き回るのに最適です。Orbiterは複数並べても単体で使用しても、フレキシブルにさまざまなニーズに対応できるのです。

色味の点でOrbiterのパフォーマンスはいかがでしたか?人物の顔の照明にも使用されましたか?

ジョーダン・チャンがナイトクラブで娘を探すシーンの撮影では、Orbiterを15ºのリフレクターでプログラムし、照明アシスタントにランプヘッドを手動で揺らすように指示しました。Orbiterを2基使うことで、ナイトクラブのエントランスの色鮮やかで幻想的な輝きを表現することができました。Nanguan製充電ランプ(継続使用で1.5時間点灯可)とOrbitersを使ったサイバーパンク風の基準照明でシーンを作り、そこにモダンな雰囲気を追加しました。僕は顔に当てる照明にもOrbiterを使用しました。車のシーンではOrbiterを2基使って直接撮影を行い、色温度は4300Kに設定しました。これは人物にメイン照明と背景照明を当てる場合にとても便利です。何を隠そう、このシーンは発電トラックが使用できない古代都市で撮影されたのです。Orbiterを稼働させるには、近くの店で照明機器を一般用の電気供給源に接続しなければならなかったのです。Orbiterは優れた光度と省電力を誇るとても実用的な機器だと思います。

Orbiterは現在、2000-20000Wの色温度によりカラーゲルを調節する機能をサポートしていますが、本作品を撮影する際にこの機能を使って便利だった点について教えてください。

実はこのトピックはとてもお話したい内容なのです。デジタル化や放送、映画、舞台の統合は照明において大きなトレンドとなっています。『Emergency Rescue』はCODE製の照明コンソールを使用しているので、ガファーはモバイルタブレットを使ってシーンの色を素早く変更することができました。残念ながら本作の撮影時は一般的なOrbiterプロトコルがなかったので、カラーゲルの調整は取り外し可能なパネルで行いました。異なる環境のシーンを撮影するときは、夜のシーンはカメラの色温度を4300Kに設定しておき、モニタリングのために前もって調整しておいたLUTを使用しました。しかしこうすると、もとの標準の色相とは異なる色が発現してしまうのです。例えば、カメラでは赤に設定されていても、少しずつマゼンダやピンクに変化してしまいます。Orbiterの6色ライトエンジンは標準カラーゲルをベースにしていて、色かぶりのキャリブレーションや鮮やかな感情豊かな光の生成により、これらのわずかな変化に対応することができます。

Orbiterを使用された経験から、他にお話いただけることはありますか?

結局、機器は単なる道具に過ぎないのです。機器ができることは、フィルムメーカーのインスピレーションと意識をとらえることです。つまり、監督の映画に対する中心的な考えをどのように表現するか、人物の動きを最も生き生きと細やかにとらえるにはどうしたらよいか、最もふさわしいビジュアルはどのように作り出せるか、というのはフィルムメーカー自身が取り組むべきことなのです。
今回、僕は戦いのシーンでOrbiterのオートセンサー補正機能とズーム機能を試す機会がありませんでしたが、今後の映画制作では、ぜひこの機能を活用したいと思います。

Beijing Starlight Rentalのリンさんは、限られた予算の中で、できる限り僕と撮影隊をサポートし、サービスを提供してくれました。本当に感謝しています。またStarlight Rentalのスタッフの皆さんもクリエイティブに動いてくださり、撮影隊がスムーズに効率よく作業を行えるよう、各種の主要な機器を一式準備してくれました。最後に、イーロン・マスクの有名なことばを借用します。「新しい舞台に立つことを恐れるな(Don’t be afraid of new arenas.)」

オープニング画像:©Gao Pengyu