チームは、カメラ内に映像を直接記録し、これをポストプロダクションや修正、またはスローモーションなどの特殊効果に使用することができました。中継車やスタジオといった標準的なプロダクション環境を使用すれば、ARRI Multicamシステムで、HDまたはUHD/4K信号を、放送局、ステージ上のスクリーンまたはソーシャルメディアプラットフォームなどにリアルタイムで同期伝送することも可能です。このライブプロダクションシステムにはさまざまな機材を統合できるため、制作会社は独自のニーズに応じて撮影をカスタマイズできます。
Shiji HanTangフィルム・アンド・テレビジョン・グループの制作チームは、3日連続での現場でのプロダクション作業を無事に終えることに成功しました。テクニカルディレクターのLu Beiは、こう語っています。「ARRI Multicamシステムがもたらす変化を体験したプロデューサーは少なくありません。当社の場合、多くのプロデューサーにこの制作コンセプトを広めようと、ARRIと共に多くの活動を行ってきました。それが今年の成果につながったのです。」
今回のコンサートの制作チームは、ARRI Log C信号に基づく映画的な制作プロセスを採用しています。「このワークフローを使うことで、従来の放送制作プロセスと比べて、より多くのディテール、許容差、より優れたノイズコントロールを保つことができました。その結果、幅広い可能性が生まれました。さらに、ポストプロダクションでの選択やスタイル変更の余地も広がったのです」とLiu監督は述べています。今回はコンサート会場での照明環境が複雑であることを考慮し、Log Cモードをリアルタイムカラーグレーディングと組み合わせ、これを照明やステージデザインによって補完しました。そうすることで、ARRIのMulticamシステムの優れた許容差と色再現力を完全に引き出すことができました。
Shiji HanTangフィルム・アンド・テレビジョン・グループの制作チームは、3日連続で現場でのプロダクション作業を担当しました。
Log Cワークフローの採用について、テクニカルディレクターのLu Beiはさらに、こう述べています。「技術的な面については、ごくシンプルでした。ライブ中継の安全性と安定性を確保できるよう、すべての信号を接続しただけです。」 これにより、光が少ない状況でも優れた舞台撮影を確実に行うことができ、映画のような質感の高品質映像が実現したのです。さらに、ARRIの色域の広さをベースにしたリアルタイムのカラーグレーディングを行いながら、高いダイナミックレンジを維持することができました。Lu Beiは、このアプローチこそが、映画的なTV番組制作の最も理想的なワークフローになるだろうと考えています。「4K HDRとHD SDRのライブ中継のバランスをとるのは技術的に難しい課題ですが、このやり方は優れたソリューションとなるでしょう。」 この方法では、映画撮影のテクニックをフルに活用することで従来のTV制作プロセスに対応できるだけでなく、HD/UHDでの制作の場合の映像のテクスチャが向上します。
ARRI Multicamシステムの採用により、通常の放送用カメラではこれまで得られなかったディテールの撮影が可能になりました。
国境を越えた協力体制(左から右):Per Zachariassen、Karsten Bloch Jacobsen、Lu Bei、Martin Samsø
ユーロビジョン・ソング・コンテストで以前プロダクションディレクターを務めていたPer Zachariassenは、北京国家体育場、愛称「鳥の巣」での今回の現場プロダクション作業をサポートしました。彼と一緒に、ステディカムのシネマトグラファーであるKarsten Bloch JacobsenとMartin Samsøもチームに加わりました。ZachariassenはCuePilotプロダクションシステムの創始者であり、このシステムを活用することで、チームは制作効率の向上と、大画面でのMTV並みの映像の提供に成功しています。Liu監督はCuePilotについて、「主にカメラショットの綿密なプランニングに用いるシステムです。『鳥の巣』でのコンサートでは、AMIRAの優れたビジュアルパフォーマンスを活かせるように、AMIRAと組み合わせて使用しました」と説明しています。
ライブの期間中、撮影に参加したライブプロダクションのエキスパートたちは、機材の使用にあたり、さまざまな視野が得られる固定カメラ位置だけでなく、ステディカム、Flycat、トラック、クレーンといった移動型システムとも組み合わせています。Zachariassenもアイディアを出した一人であり、ステディカムをステージ上のシンガーの動きと連動させる方法や、独自のアングルからの撮影を提案しました。「Perは、ステージや歌手にもっと近付くことで撮影コンテンツの個性を強めるといった、カメラのポジショニングについての要求を提案してくれました」と、Liuは述べています。
Jason Zhangのコンサートでは、CuePilotシステムとARRI Multicamシステムが組み合わされました。
ライブプロダクション技術の今後の動向について、Liu監督の未来予想は明確です。「二つの面で需要が高まるでしょう。一つは、機材をより高度に統合することで、映像制作プロセス全体をコントロールし、より標準化され効率的な、質の高いプロセスを実現することです。もう一つ、ユーザーの要望の面で、個人の好みに合わせた映像を要求する動きが強まるのではないでしょうか。」