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ARRI ALEXA Mini LFでコメディに深みを実現した『Rutherford Falls』

シネマトグラファー、ロス・リーゲはオスカー受賞者のローレンス・シャーと組み、NBCの新しいシットコム『Rutherford Falls』の撮影でARRIラージフォーマットを使ってシネマトグラフィーの深みと美しさを体現しました。

Jul. 16, 2021

映画史を通してフィルムフォーマットは、ビジュアルと感情のインパクトを追求することで進化してきました。現在使用されているアスペクト比は、映画業界が1950年代にワイドスクリーンに移行したものが基準になっていますが、テレビの出現も一部影響しています。しかし、『アラビアのロレンス』や『ベンハー』が一世を風靡したのはフレームの大きさだけが理由ではないはずです。フォーマットはたいてい独自のレンズアーキテクチャやフィールドの深さ、そしてその他の特徴的な光特性をともないます。私たちの時代のフィルムメーカーは、あらゆる種類の映画作りにこれらのツールを活用しています。

『Rutherford Falls』を良い例として見てみましょう。このシリーズはピーコックオリジナルの30分のシットコムで、ロス・リーゲ(『グレイズ・アナトミー』、『The Catch』、『Queen America』)が撮影監督を務め、ARRI ALEXA Mini LFを使って撮影しました。この作品は長年の親友2人についての話で、彼らの住む小さな町がご先祖様の像にまつわる問題により分断されたことでその2人の絆が脅かされるというコメディです。エド・ヘルムズとジャナ・シュミーディンクが主演を務め、『ジ・オフィス』、『ブルックリン・ナイン-ナイン』、『パークス・アンド・レクリエーション』を手がけたマイケル・シュアも製作に参加しています。

リーゲは製作準備段階でローレンス・シャーと密に作業を行っていました。シャーは2019年、『ジョーカー』でラージフォーマットによるシネマトグラフィーを手がけ、オスカーを受賞しました。シャーは最初の3つのエピソードを監督しました。リーゲによると、2人ともそれぞれ、この作品は30分のシットコムではあるけれど、ラージフォーマットで撮影するべきだと考えていたそうです。従来、シットコムのフォーマットはビジュアルを考慮に入れないことが多いので、これは珍しいことでした。

「僕は最初からラージフォーマットをすすめていました」とリーゲは言います。「普段コメディを撮影する方法とは違う方法で撮影できるならやりたいと言ったのです。もう決心していたんですよね。ラッキーなことに、プロデューサーも興味を持ち、詳しく聞きたいと言ってくれました。最終的にラリー(ローレンス)と僕で話し合いが始まり、彼が決断を下しました。僕らはやる気に満ち溢れていてプロデューサーも応援してくれたので、ラージフォーマットでいくことにしたのです。

『ファーゴ』、『シリアスマン』、『バーン・アフター・リーディング』などのデビッド・リンチとコーエン兄弟によるコメディも話によく出てきました。リーゲはこう続けます。「ああいった映画では、人物を撮影するとき、必ずレンズを置くべき位置があるんですよ。正しい位置というのは、カメラを物理的に人物に近づけることなんです。」

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『Rutherford Falls』は新型コロナウイルス感染拡大の最中に撮影されたため、感染対策を万全に行う必要があった。

「ラージフォーマットの利点は他にもあります。焦点距離の長いレンズを使いながらも広いフレームが得られるのです。スモールフォーマットを使用する場合、かなり広角のレンズを使用しなければなりませんが、ラージフォーマットでは40 mmを使用しながら、希望通りのサイズで顔を撮影でき、なおかつその周りも撮影できるのです。被写体にカメラを近づけることで、より深みのある絵が撮れました。これがラージセンサーの利点です。物理的に俳優に近づきながら、顔がきれいに映らなかったり歪んだりすることなく、スモールフォーマットで21mmレンズを使って撮影したような粗い映像にもならないのです。長めのレンズでも撮影しましたが、人物と空間が本当に重要なのです。」とリーゲは述べます。

リーゲは、エピソード製作の時間と予算の制限もこれらの決断を行う理由となったと言います。「コメディは広角でこそ生きる、という人もいます。しかし、面倒になって、エイッと長距離レンズで撮影してしまいたいという誘惑もあります。一番適した焦点距離を選ぶためにいろいろと考えました。物理的にカメラを近づける場合とズームを使う場合の両方のサイズを得られるのでしょうか?ワイドショットを撮影しながらその深度も感じることできれば、もう言うことはありません。」

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ジフォーマットの活用のほかに、リーゲは運転シーンにバーチャルプロダクションセットも利用した。

「パンデミックのため、10エピソードの撮影は当初保留になっていましたが、2020年9月に再開した後は約13週撮影を行いました。約65%が完了しています。当初の予定より多いくらいです。当初使用していたレンズはMasterBuilt Classicsで、アスペクト比は2:1でした。Mini LFのフォトサイトは4448 x 3096でセンサーは4.5Kです。

このプロジェクトでは、背景画像としてかなりの量のLEDスクリーンプロジェクションが必要でした。これは2.6 mmのUniluminでできた20インチ x 20インチのタイルの壁によるフルスクリーンです。設定によっていくつかのバリエーションを作りましたが、ある設定では8フィート x 32フィートの壁と8フィート x 16フィートのフローティングウォールをタイヤに付けたものが必要で、これは必要に応じてカメラに対応するようにできていました。シーンや時間、脚本に書かれた場所に合わせて選べる別々のHDドライビングプレートを9つまで使用することができるものです。上のスクリーンにSkyPanel S60を追加し、タングステンを上部に設置することで、背景のプレートと同じ効果を実現しました。LEDプレートが照明のベースを決定するため、このプロセスは少し古い方法かもしれません。ですから、状況によって強化するための照明を追加しました。」

運転シーンのような広いスペースでは、リーゲが照明の調整や補完を行いました。「SkyPanelsは僕にとって本当に使い勝手がいいんですよ。」とリーゲは言います。「どんなに光度が低くてもクオリティは最高です。おまけにいろいろな用途に適しているんです。僕は調整やエフェクトのエッセンスに使ったり、室内の雰囲気づくりのために天井に使ったりしています。夜間の屋外で使ったりもします。言い始めたらきりがないですね。パンデミックの時期はセットを損なうことなくお互いに距離を保たなければいけなかったので、セットアップが簡単で調節もリモートでできる点、そして熱にも強いというのが特に便利でした。」

『Rutherford Falls』の撮影終了後、リーゲは、アナモルフィック・レンズを使った焦点距離を長くとり、鮮やかな色彩を使用しないグランジスタイルのまったく異なる撮影スタイルの『ウォーキング・デッド:ワールド・ビヨンド』の撮影に戻りました。

「その作品に合った撮り方があって、それぞれのアプローチが必要なんですよ。でも『Rutherford Falls』の撮影を行ったことで、強制されない限り今までのスタンダードフォーマットに戻る理由がなくなりました。あの手法がエレガントではないと言ってしまってはいけないかもしれませんが。学生の頃からミディアムフォーマットでスチールを撮影してきましたが、今や、映画とテレビでそれができる時代がやってきたのです。近距離での撮影は可能だということはわかっていて、でも『ウォーキング・デッド』では完全にそれを忘れていたんです。ワイドオープンで撮影することができたはずなのに。そして『Rutherford Falls』でデザインを行っているうちに、技術ありきでデザインを進めることで、できる限りのことを最大限に生かすチャンスに気づいたのです。」

「ラージ・フル・フォーマットでの撮影は、もはや『ジョーカー』のような大作だけのものではないんです。」とリーゲは言います。「僕からすると、これがこれからのスタンダードになることは間違いないと思います。コメディを新しい形で見せるツールとして、ふさわしいのですから。そして、この作品でそれを実現するチャンスを得られたことを嬉しく思っています。」